2019年6月4日、池上会館にて池上エリアリノベーションプロジェクトとしてのシンポジウム「これからの池上のまちづくり~地域の資源を未来に活かす~」を開催いたしました。今回はそのサマリーレポートをお送りします。
////////////////////////////////////////////////////////////
定員の倍、400名が来場
当日は定員先着200名という予定でしたが、多くの方にご来場いただきました。現場では急きょ増席に増席を重ね、最終的に400席を用意しましたが、満員となりました。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございます。
シンポジウムは前半が本プロジェクトの概要および基調講演、後半がゲストを招いてのパネルディスカッションという2部構成で進行しました。
まず会に先立ち、松原大田区長より「ご参加いただいた皆様には主体的にまちづくりの輪を広げる取り組みに一役買ってもらいたい」とご挨拶申し上げました。
その後、東京急行電鉄の東浦事業部長より、「リノベーションスクール@東急池上線(2017年開催)」「生活名所プロジェクト」などこれまでの取り組みや、本プロジェクト含めて公民連携まちづくりの進め方について説明いたしました。
またプロジェクトの拠点であるSANDO BY WEMON PROJECTSと、その運営パートナーであるLPACK.をその場で紹介しました。
完璧なまちなどない
基調講演では田中元子さん(㈱グランドレベル代表)にお話しいただきました。
冒頭には、「完璧なまちなどない、だからこそ池上はどうなりたいのかが大事。」とメッセージ。
「1階づくりはまちづくり」として㈱グランドレベルを経営されている田中さん。デンマーク・オーフスの事例を紹介し、人口の多さではなく人の姿が見えるまちであることが大事だと説明。グランドレベルとしても様々な活動を行い、そのなかで能動性を発露させるきっかけこそが大切だと気付いたそう。「みんなが自分の好きなことをやる、あるいはそれを許容することこそがまちづくり」と締めくくりました。
街への“投資”/挑戦する機会を
後半はパネルディスカッションに先立ち、大田区近江課長より「池上地区まちづくりグランドデザイン」についてご紹介。(こちらより資料をご覧いただけます)
パネルディスカッションでは、基調講演を行った田中さん、モデレーターの東浦さんに加え、茨田禎之さん(㈱アットカマタ代表)と輪島基史さん(㈱蓮月代表)も登壇。まずはお二人の活動紹介をしていただきました。
茨田さんは京急梅屋敷駅そばの高架下に開設した「KOCA」を紹介。さらに大田区で大家業を営む自身の経験を踏まえて「果実を得るには土壌から」として「街への“投資”」の大切さを訴えました。
輪島さんは池上の古民家カフェ蓮月を始める経緯や、老舗釜飯にれの木を事業承継したエピソードを交えつつ、「何かを挑戦するということは街にとって素敵なこと。そういった機会を提供することが大切。」とお話しいただきました。
ウラ池上?
いよいよパネルディスカッション移ります。最初に掲げたトピックは、先ほど大田区から紹介のあった池上地区まちづくりグランドデザインについての率直な印象について。
輪島さんは池上本門寺の裏まで対象範囲に入っていることに言及。「このエリアはいわばウラ池上。ウラ原宿の存在が原宿を押し上げているように、このエリアまで盛り上がれば一度だけでなく二度三度と池上を訪れる機会になる」と。
一方でキーコピーとして掲げられていた「だれもが好きになるまち池上」についてはみなさんからコメントが。ここでいう「だれもが」はどんな人たちなのか、実現した時にどんな風景が広がっているのか、イメージがもっと具体的になると良いという話が出ました。
想いだけでなく、したたかさも!
続いてのトピックは「まちづくりに必要なこと」。
茨田さんは「時間」を挙げました。まちが変わるには時間がかかる。その点をしっかり自覚し、たとえばお金も含めて、いかに持続可能な形を模索するかが大事だと、実際に複数の事業を取り組んでいる茨田さんだからこそのお話をいただきました。
また田中さんもメルボルンで地元の商店だけが入るショッピングセンターがオープンしたことを紹介しつつ、しかしそれは“いいことしよう”ではなく、“このまちにお金を落とそう”というしたたかな戦略のもとに生まれた場所だと強調。「もう想いだけのまちづくりがやめよう。もっとしたたかさを!」と訴えました。
さらに終盤へと進むと議論は「地域を担う人材の育成」へ。
田中さんは、大きな組織になればなるほど個人のことを過小評価することを指摘しつつ、人材育成なんてしなくて良いとし、大事なのは始めたチャレンジを許してあげることだとしました。
東浦さんも同意し、二子玉川の事例を紹介。地元で地ビールが飲みたいという主婦の方が、その思いだけでオリジナルクラフトビールをつくり、ついにはお店までオープン。まちづくりを始めるのに気構える必要はなく、自分のやりたいことで街に関わっていけば良いのでは、コメント。
最後に質疑応答を交えて、閉会。終了後も会場では登壇者の前に多くの列ができ、活発にやり取りをされていました。2時間では足りないほど、多くの熱量が生まれた会となりました。